犬の心不全治療において重要な役割を果たすベナゼプリルについて、その効果、作用機序、副作用を詳しく解説します。
また、慢性心不全を抱える犬の症状、心不全が進行する前の重要なサイン、治療における注意点にも触れ、老犬の心不全症状や突然死のリスク、心不全のステージごとの対応策を紹介します。
記事のポイント
- ベナゼプリルが犬の心不全治療にどのように役立つか
- ベナゼプリル使用時の犬の一般的な副作用
- 犬の慢性心不全の症状と進行のサイン
- 心不全を患う犬のケアと管理の重要性
ベナゼプリルで犬を治療をする前の予備知識
- 慢性心不全の典型的な症状
- 老犬に見られる心不全の特徴的症状
- 心不全のステージ別症状
- 心不全による突然死のリスク
- 慢性心不全と余命の関係性
慢性心不全の典型的な症状
慢性心不全は心臓のポンプ機能が低下することにより引き起こされ、最も一般的な症状は、呼吸困難です。
これは、心臓が血液を効率的に全身に送り出せないため、肺に液体が溜まり、呼吸が困難になることに起因します。
犬が安静時にも30回/分以上の呼吸数を示す場合、これは心不全の警告信号と考えられます。
次に多いのは、持続的な咳です。
特に、夜間や早朝に咳が増える傾向があり、肺への液体の蓄積が原因で、咳を通じて体が余分な液体を排出しようとする反応です。
また、疲労感や活動性の低下も見られます。
犬が以前よりも運動を避けるようになったり、日常の活動に対して無関心になることがあり、これは心臓が十分な酸素を筋肉に供給できないために起こります。
食欲不振や体重減少も、慢性心不全の犬に見られる症状です。
心臓病が進行すると、消化器系の血流が低下し、食欲が減退し、これにより体重が減少することがあります。
腹部の膨満感や腫れも、心不全の進行に伴って見られることがあり、これは心臓の機能低下により体内の血液循環が悪化し、腹部に液体が溜まることで起こります。
犬の僧帽弁閉鎖不全症がなぜ起こるのか、どういう病態なのかをイラスト化しました（再掲）
国試受験生の方、ご参考になればー。 pic.twitter.com/GJcRC6wfh2— Yue（北見まき） (@Yue_kitamimaki) February 1, 2023
老犬に見られる心不全の特徴的症状
老犬における心不全は、若い犬と比較して独特の症状を示すことがあります。
特に、高齢になると心臓の機能が低下しやすく、その結果として心不全が発症するリスクが高まります。
具体的には、息切れや咳が頻繁に見られ、これらは心臓が十分な血液を全身に送り出せないことに起因します。
また、老犬は活動性が低下し、以前よりも疲れやすくなる傾向があります。
心不全の進行に伴い、老犬は徐々に体重減少や食欲不振を示すこともあります。
これらの症状は、心臓の効率が低下し、体の各部に十分な栄養や酸素が行き渡らないために起こります。
さらに、進行した心不全では、腹部の膨満感や浮腫（むくみ）が見られることもあり、これは体内の液体バランスが崩れることによるものです。
✅老犬に多い病気 僧帽弁閉鎖不全症（MR）
MRは老犬の心臓疾患の大半を占めます。咳が続く、疲れやすい、散歩を嫌がるなどのサインに注意です。悪化すると呼吸困難、肺水腫、体重減少（悪液質）など命に関わります。〝病気が寿命を追い越さないこと〟を目標に薬や食事などで管理していきます。
— 犬と猫の緩和ケア/在宅緩和ケア専門動物病院 (@inunekokaigo) January 25, 2023
— くりてつ (@kuritetsu723) July 17, 2018
心不全のステージ別症状
心不全は、病状の進行に応じてさまざまな症状が現れ、それぞれのステージで特有の特徴があります。
ステージA：初期段階
この段階では、心臓に異常は見られますが、明確な心不全の症状はまだ現れていませんが、元気の低下や散歩の距離の短縮など、日常活動における変化が見られることがあります。
診断指標としては、心筋バイオマーカー（BNP検査）で異常値（900以上）が見られる場合があります。
ステージB1：軽度の心不全
軽度の心雑音や、心拍数、呼吸数の増加が見られ、常に心拍数や呼吸が早い、手足が冷たいなどの症状があります。
心エコーで軽度の異常が見られることがあります。
ステージB2：中等度の心不全
興奮時に舌が青くなる、息切れが容易に起こるなど、より顕著な症状が現れ、痰の絡んだ咳、心雑音の存在などが主な症状です。
心エコーで心臓の左心房が大きくなり始める（VHSが11.5以上）ことが診断指標となります。
ステージC：重度の心不全
激しい咳、異常に早い呼吸、興奮時の失神など、日常生活に大きな影響を及ぼす症状が現れます。
心エコーで心臓の左心房が顕著に大きい（VHSが11.5以上）ことが診断指標です。
ステージD：末期の心不全
常に激しい咳、非常に早い呼吸、時折呼吸困難に陥るなど、非常に深刻な症状が見られます。
心エコーで心臓の左心房が非常に大きい（VHSが11.5以上）ことが診断指標です。
これらのステージ別症状の理解は、適切な治療計画の策定と、病状の進行を遅らせるために不可欠で、定期的な検査と症状のモニタリングにより、心不全の管理が可能になります。
参考
心不全による突然死のリスク
犬の心不全による突然死のリスクは、病気の進行度や管理の仕方に大きく依存します。
心不全は、心臓が血液を体中に十分に送り出すことができなくなる状態を指し、これにより様々な健康問題が引き起こされます。
特に進行した心不全の場合、突然死のリスクは無視できないレベルになります。
心不全による突然死は、心臓のリズム異常（不整脈）が主な原因とされていて、研究によると心不全を患う犬の約20%が不整脈による突然死を経験すると報告されています。
慢性心不全と余命の関係性
心不全の犬の平均余命は、病状の重さや治療の有無によって異なりますが、治療を行わない場合、約6ヶ月から1年程度とされています。
しかし、心不全の治療法は日々進化しており、症状の軽減や生活の質の向上を目指す治療が多く存在します。
適切な治療とケアによって、この期間は治療を受けない犬と比較して平均して1.5倍から2倍の生存期間の延長が期待できるという研究結果もあります。
犬の慢性心不全と余命については、病状の重さ、治療法、日々のケアによって大きく変わるため、愛犬が心不全を患った場合は、獣医師と緊密に連携し、最適な治療計画を立てることが重要です。
犬の心臓病、僧帽弁閉鎖不全症は、薬で病気の進行を遅らせ、余命を伸ばすか、手術で助けるか
手術費は100万～200万で、横浜、名古屋、東京の3つの病院だけ
生きれるチャンスがあっても、遠すぎる
小型犬は、なる子が多いので、要注意です— め組 (@meguminosatocom) July 3, 2017
ベナゼプリルを用いた犬の心不全管理
- ベナゼプリルの作用機序と効果
- ベナゼプリルの副作用
- ペットオーナーの口コミ
- 心不全は治るのか
- 心不全になったら気をつけること
ベナゼプリルの作用機序と効果
ベナゼプリルは、犬の心不全治療において重要な役割を果たす薬剤です。
この薬は、アンジオテンシン変換酵素（ACE）阻害薬として分類されます。
具体的には、ベナゼプリルは体内でアンジオテンシンIをアンジオテンシンIIに変換する酵素を阻害します。
アンジオテンシンIIは血管を収縮させる作用があり、血圧を上昇させるため、この変換を阻害することで血圧を下げる効果があります。
ある研究では、ベナゼプリルを投与された犬群は、投与されなかった犬群に比べて、運動耐性の向上が統計的に有意であったとされています。
さらに、ベナゼプリルは腎臓にも一定の保護作用を持つとされています。
心不全を患う犬では、腎臓への血流が低下することがありますが、ベナゼプリルによる血圧の低下は、腎臓への血流を改善し、腎機能の保護に寄与する可能性があります。
これらの効果により、ベナゼプリルは犬の心不全治療において重要な選択肢の一つとなっています。
ベナゼプリルの副作用
ベナゼプリルは、犬の心不全治療において広く用いられる薬剤ですが、いくつかの副作用が報告されています。
最も一般的な副作用は、血管拡張作用により血圧が低下することで、これは特に治療開始時や用量調整時に見られることが多いです。
低血圧の症状としては、犬が弱ったり、ふらつきを見せたりすることがあります。
また、ベナゼプリルは腎機能に影響を及ぼすことがあり、これにより血液中のクレアチニン値が上昇することがあります。
クレアチニン値の上昇は、腎機能障害の指標となり得るため、治療中の犬では、定期的な血液検査により腎機能のモニタリングが推奨されます。
消化器系の副作用も報告されており、一部の犬では吐き気、嘔吐、下痢などが見られることがあります。
さらに、ベナゼプリルは稀に血液異常を引き起こすことがあります。
これには、白血球数の減少や血小板数の減少が含まれ、これらの血液異常は、感染症のリスクを高める可能性があります。
これらの副作用は、全ての犬において発生するわけではありませんが、ベナゼプリルを使用する際には、これらの可能性を認識し、獣医師と密接に連携して適切なモニタリングを行うことが重要です。
なお、副作用の発生率については、研究により異なる報告がありますが、一般的には比較的低いとされています。
ペットオーナーの口コミ
2023-11-11 By ろんくん
ベナゼプリル5mg（チバセンジェネリック）
継続して薬を購入させてもらっています。
小さい錠剤なので比較的飲ませやすいです。
価格もおさえられて助かっています。
ベナゼプリル5mg（チバセンジェネリック）
心臓疾患のワンチャンに処方しています。
まだ、7歳です。少しでも長く生きてもらいたく毎日与えてます。病院で処方されると高額なのですがこちらの商品は廉価で助かってます。
ベナゼプリル5mg（チバセンジェネリック）
僧帽弁閉鎖不全症と診断され、かかりつけ医の同意を得てこの薬を使用しています。
効果はあると思います。体重はしっかりと測ってから用量を守って使うことをおすすめします。
2017-11-02 By はぴ
ベナゼプリル5mg（チバセンジェネリック）
僧帽弁閉鎖不全症のチワワに半錠づつあげていました。
おいしくないようで、後で上手に吐き出すので別の商品に変えました。
お安いので、これがのめればよかったのですけど、毎日確実に飲ませることができなかったので、残念です。
心不全は治るのか
犬の心不全治療は、病気の完治を目指すものではなく、症状の軽減と病状の進行を遅らせることを目的としています。
研究によると、適切な治療を受けた犬の平均余命は、治療を受けない犬に比べて延長される傾向にありますが、これはあくまで平均的な数値であり、個々の犬によって大きく異なります。
心不全の治療には、定期的な獣医師の診察、栄養管理、適度な運動などが含まれます。
心不全の犬は、急激な症状の悪化や突然死のリスクも抱えているため、飼い主は犬の日常的な行動や健康状態に注意を払う必要があります。
総じて、心不全は「治る」病気ではありませんが、適切なケアによって、犬の生活の質を大きく向上させ、より長く健康的な生活を送ることが可能です。
心不全になったら気をつけること
心不全を患う犬へのケアでは、獣医師の指示に基づく薬物治療に加えて、日々の食事管理と適切な運動、そして愛情深い接し方が重要です。
食事面では、塩分を制限し、肥満を避けるための栄養バランスの取れた食事を心がけ、適度な体重管理を行い、心臓に余計な負担をかけないようにすることが大切です。
運動に関しては、犬の状態に合わせた軽い散歩が適しています。
犬が疲れたり、呼吸に苦しみを感じたりしないよう、常に様子を見守りながら無理のない範囲で行います。
特に気候の変化が激しい日は、室内での軽い遊びやトレーニングを取り入れることも良いでしょう。
そして何よりも、愛犬に対する穏やかな声掛けや優しい撫で方で、安心感を与えることが重要で、これにより、愛犬の精神的な安定を促し、ストレスを軽減します。
心不全の犬との生活は挑戦的ですが、愛情深いケアを通じて彼らの生活の質を高め、健康的な生活をサポートすることが、飼い主としての喜びでもあります。
◆心臓病◆
とくに老犬は心臓が弱くなり、心不全などを起こしやすくなる傾向があります。心臓肥大が進むと、気管が圧迫されて乾いた咳が続き、呼吸困難や失神することもあります。早期に発見して、塩分を控えた食事療法や運動量やお散歩時間など、心臓に負担をかけない生活を。— 犬との生活 🐶&🌈 (@SansandiegoCA) April 20, 2022
総括：ベナゼプリルは犬の心不全に効果的
記事のポイントをまとめます。
ベナゼプリルは犬の心不全治療に用いられるACE阻害薬
心臓の負担を軽減し、心不全の進行を遅らせる効果がある
投与量は犬の体重や症状に応じて調整される
血管拡張により心臓への負担を減少させる
心臓のリモデリング防止にも寄与
副作用には低血圧、嘔吐、下痢、食欲不振が含まれる
低血圧は使用する犬の約10%に見られる副作用
アレルギー反応や腎機能への影響の可能性
心不全犬には塩分制限食が推奨される
肥満回避と適正な体重維持が重要
過度な運動は避け、適度な散歩が推奨される
静かで安定した環境を作ることも重要